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4年ぶりに帰ってきた!新展開のストーリー。 ついに最新作が発売開始! 「地下銀行 第五章」オンライン立ち読みコーナー(原作:発売元)車田康明ページ数 213P (定価)2500円(本体2381円。消費税119円) (送料別)290円(冊子小包:ゆうメールでの発送となります) 続編を望むマニア向けに特化した、シリーズ最新作です。 是非ともご注文ください。 (参考)半月山より見た、実際の光景はこちらから |
四年ぶりの続編登場に、マニア狂喜
好評発売中! |
小説127ページから131ページまでを抜粋やがて日は暮れてきた。駐車場にも、車は殆ど停まっていない。だが、その中で、 夢野と大島を乗せたキャンピングカーは、明るい状態であり、何ら問題はなかった。 大島は、自分で撮影した映像をテレビに映し出した。かつて、大島自身が出かけ てビデオカメラで撮影したものである。 「夢野さん、見てください。ここが奥鬼怒です。日本で一番、高い場所にある湿原 です。鬼怒川の源流だから、ここまで足を運ぶのも、二日がかりですよ。群馬県 ルートから来る方法もありますけど、栃木県ルートが一般的なようですね。で、 この付近ですが」 と、画面に表示される湿原の一角を指で指し、 「大体、この辺ですけど、私のお金。五億円を密封して埋め込んであるんです」 と言った。 「ええ!」 「驚きました?」 「驚きますよ。だって、ここまで来るのにだって、時間がかかりますよね。鬼怒川 の源流の場所だったら、冬に行くのは無理だと思いますし、取り出すとしても、 夏だけじゃないですかね」 大島も、大きくうなずいた。 「プラスチックに入れて沈めてありますよ。プラスチックは、木材などと違って 腐らないのが最大の利点です。鉄ですら、錆で覆われますからね」 「でも、また何で、そんな遠いところに」 夢野の疑問も、もっともである。大島もそれに対して答える。 「夢野さん。その通りです。いくら五億と言っても、なんでそんなとこまで行って 隠す必要があるのか、という意見はごもっともです。 しかし、逆を考えてみてください。お金の持ち主が、取り出すのが大変だという 事は、税務署もまた、お金を回収するのが大変なんですね。 都内のビルの一角に、たくさんのお金を隠したらどうなります。交通の便も良すぎ ですし、隠し財産のお金を見つけたら、簡単に押収出来てしまうでしょ? それを阻止するためには、人里離れた山奥に、お金を隠すのが一番なんです。 隠す方も命がけなら、税務署の職員も、命がけで回収に来なければならなくなります。 途中のオロオソロシの滝ですら、体力がないと、来るのが大変ですからね。 彼ら役人は、こんな鬼怒川源流にまで隠したお金の回収にやってくる事など、 九十九パーセントないです。 仮に運悪く、嗅ぎつけたとしても、冬は大雪に阻まれて、命がけでなければ来られる はずはありませんし、他の時期でも、いくら隠したかわからない金のために、奥鬼怒 まで金を取りに来る押収令状を、請求すると思いますか? 仮にやって来たとしても、今度は、この広い湿原の中からお金を探し出すという、 果てる事のない作業をしなければならないでしょ? そんな事するなら、都内でお金を隠し持っている資産家の二、三人を摘発した方 が、はるかに楽ですよ。 ヘリをチャーターしてここに来る手もないではないですけど、税務署だって、 かけられる経費に限界がありますからね。栃木県税事務所じゃ無理でしょ。 東京国税局でも無理です。 そんな事なら宇都宮市内で、ビルの中に隠しマネーを抱える会社を家宅捜査した 方が、ずっとマシですから」 「行くのも、かなり遠そうですね」 「奥鬼怒は、鬼怒川の源流になります。標高は、約二〇三〇メートル。都内からだ と、行くだけでも一苦労でしたからね。 栃木と群馬の、ほぼ県境の場所にあります。私と仲間達が、金を抱えて隠しに行った 時も、行くだけでかなりの時間が潰れましたから。 でもまあ、他の場所とは隔絶されたような湿原で、ここでしか見られないような珍し い植物も色々見られたから、満足すべきかもしれませんけどね。 二十人くらいの人間で行って、最初に、湿原の奥に設置してあるベンチに腰掛けて 休んで、少したったら、みんなでプラスチックの入れ物を、湿原の中に埋め込む作業 を行いましたから。 遊歩道を歩く時も、風が気持ち良かったです。すべては、金を隠すためです。金を 隠すためなら、私はどこにでも行きますよ」 この執念に、夢野は、ただ驚くばかりであった。 「私も以前、あちこちに金を隠そうと、画策したものです。 まず、富士山の山頂近くに隠し金庫を埋め込もうとした事がありますが、実現出来な かったんです。理由を一言で言ってしまえば、あまりにも登山者が多くて、人目に付き やすい点です。とにかく、次から次へと登山する人が多くて、これじゃダメだなあと 思いました。 富士山は、南アルプスなどと違って、一ヶ所だけ突然、高く浮き出るような感じで 山がそびえています。三百六十度、あらゆる角度がガラ空きです。という事は、見通し が良すぎて、あまりにも人目に付きやすい場所ですね。 他にないかと、槍ヶ岳に登山した時も、やはり、登山する人間の多さが最大のネック でした。 こちらも、次々に人が登ってくるから、人目に付かずに金庫を埋め込むのは無理です。 槍ヶ岳でさらに手に負えないのは、インターネットを使ってのライブカメラが、常に 稼働している点です。良い隠し場所が見つかり、実際に隠し金庫を埋め込む計画を立て たら、ライブカメラに映り込んでしまうのに気が付きました。さすがにそれは、マズイ ですから。 結構な標高と、登山の難しさで槍ヶ岳も候補だったんですけど、人の多さとライブ カメラの存在で、金庫を埋め込む計画を断念しました。 で、色々検討していった結果、子供の頃から何度も足を運んで地理的にも良く知って いる、日光のあちこちに埋め込んだわけです」 「ずいぶん、色々考えるものですね」 「たいした事はないですよ。奥鬼怒だって、湿原です。つまり、平面に近いから、最初 からそこに金が隠されていると狙いを定めて来られたら、発見されてしまうでしょう。 まあ、今のところは、誰も発見していないようですけどね」 と答えたのだ。 お金を隠す事に執念を燃やし続ける事。それが大島のすべてなのである。 |
小説173ページから177ページより抜粋脱税用に建てたビルで、上下の階からの国税局の総攻撃のため、空中を使って 逃げ出した夢野と大島である。これで一時的にゆっくり出来るかと思われたが、 そうは問屋がおろさなかった。 隣のビルなのに、大声が聞こえてきたからだ。このビルの下の方から、 「大島さん。今、国税局の連中が、非常階段で駆け上がってきます。階段の途中 を封鎖して私達が妨害しますから、屋上から逃げてください!」 と叫ぶ声が聞こえた。さらに、 「国税局の連中を乗せたエレベーターは、うちのビルのオーナーサイドで、乗っ て動き出した瞬間、電源を落としました。これで少なくとも、三十分は時間稼ぎ が出来ると思います」 と言ってきた。 「佐藤さんも、気がきくなあ」 と、大島は呟いた。そして、一人の男が息を切らしつつ大島のところに来て、 「こちらに逃げられたのが見えたようなので、今、うちのオーナーの佐藤に、任意 での調査要求を出したそうですけど、協力をするフリをして・・・」 大島はニヤリとする。 「よしわかった。この礼は、後からすると伝えておいてくれ」 「ご無事で」 空中を歩くような形で隣のビルに脱出するなど、さすがの国税局も予想していな かったので、任意での調査を依頼するしかなかったのだ。 しかし、逃走するには十分すぎる時間を与える事になったのである。 「夢野さん、行きましょう」 夢野と大島は、急いでビルの屋上まで行った。だが、屋上に到着しても、何も見当 たらない。 「これで脱出が出来るんですか?」 と夢野が聞くと、 「まかせてください。私に不可能はありません。逃げる事と金を隠す事に関しては、 ナポレオンと同じで、余の辞書に不可能はないという事ですから」 と大島が言うと同時に、小さなドームらしきものが両側に開いた。驚くべき事に、 そこにも小型のヘリがあったのである。 「さあ、行きましょう」 「ヘリまで操縦出来るんですか?」 「私もヘリは無理です。ヘリの中に、操縦士がいますから」 二人は、飛び乗るようにして中に入り、すぐにプロペラが回り始めた。その直後、 屋上に、国税当局の人間とおぼしき男達が次々に来たのだが、ヘリは新宿の空に 飛び立ったのである。 新宿の高層ビル群の上を、ヘリは飛んでいた。夢野に、操縦士が初めて話しかける。 「夢野さん。はじめまして。私、操縦士の田中勇と言います」 「田中君。朝から悪いね。俺もまさか、国税当局がやってくるとは思わなかったんで」 ヘリの音が響きながらも、会話は余裕で可能だ。 「わけがわからないです。まさかヘリに乗るとは思わなかったんで」 「今日は私もたまたま、佐藤さんのところの建物で寝ていたものですから、運が良い ですよ。午前中に会社に戻る予定でしたから、ちょうど良かったですね」 大島は、田中に尋ねた。 「このヘリ。連続で、どのくらい飛べる?」 「そうですね。燃料は満タンだから、今のところ、最大で二時間四十分飛べます。 最大出力が八六〇馬力。最高速度が二百四十キロ。巡航速度は目安として、二百 二十キロ。航空距離は、四百八十キロ。最大乗客は四人ですね」 「そうしたら、君の会社に近いお台場まで、飛べるよな?」 「余裕です。余裕」 「じゃあ、悪いけど、そこまで頼む。今、君の会社のタンカーに連絡するから。 お台場の近くの海上にタンカーで来てもらい、着陸の許可をもらうよ」 「了解」 海上のタンカーにて 犯罪者がヘリを使って脱出するというのは、映画などで時折見る場面だが、夢野は まさか、自分がその場面の主になるとは思ってもいなかった。 大島は、ヘリの無線を使い、どこかと連絡を取っていた。 「お台場から十キロの地点に、タンカーを移動可能か。しめた!」 無線を切った後で、夢野に状況を伝える。 「夢野さん。もう大丈夫です。今、海運会社の船がお台場近くまで来ます。小型の ヘリ一機くらいは余裕で着地出来ますから、間違いなく逃げられます」 「早いですね」 何という手まわしの良さだろうか。何があっても、他人に自分の財産は渡さない という、その執念は恐るべきものであった。夢野は内心、 「もし、お金にこれだけの執着があったら、俺も、詐欺などで騙されたりしなかっ たろうなあ」 と思ったのである。 やがて、ヘリは海上のタンカーの上に着地した。出迎えで数人が待っていた。 夢野、大島は、田中の誘導されるままに、ヘリから降りたのである。そこで待って いたのは、「大山海運」という海運会社の社員達であった。 ごつい体格の乗組員達が、次々に話しかけてくる。 「大島さん。ヤバかったじゃないですか」 「大島さんともあろうお方が、いったいどうしたんですか。まさか心変わりして、 真面目に税金を納めようなんていう考えになったんじゃないでしょうね。そんな事 になったら、地下のナマズもびっくり仰天して、大地震が起きますよ」 みんな大島の性格を知り尽くしているだけに、はやし立てていた。大島が慌て ふためく姿は、めったに見られないのである。さらに、 「珍しく、ヘマをやりましたね。年貢の納め時としては、まだ早すぎますよ」 と話しかけてくる者もいる。大島は、頭をかきながら、 「いやあ、面目ない。俺とした事が、マルサの調査情報すらつかめなかったなん て。おかげで、みんなに迷惑をかけてしまったな」 と答えた。 |
小説188ページから195ページより抜粋「それにしても、凄い仕掛けのあるビルでしたね」 「そう。粉末の見本も、こちらにあります」 と言い、小さなビニル袋に入った見本を、箱から取り出した。 「こちらの船に、置いてあるんですか?」 「青山さんに出してもらいました。主に私が調合作業をしたんですけどね」 と言い、夢野の目の前に置いたのである。また、資料も同時に取り出した。 「夢野さん。これですよ。これ」 この資料の説明が凄かった。驚く事に、毒キノコのエキスのオンパレードだからだ。 「これが色々な毒キノコをブレンドした、猛毒の粉末エキスです。これを国税局の 職員に向けて送風機でばらまいて、口から飲ませたようなものですから」 と言った。 大島は、粉末の入ったビンを、夢野のそばに置いた。 「何ですか。これ?」 ビンに貼ってある貼り紙には、手書きで「毒キノコエキス」と書いてあるだけである。 「ええとね。入っているのは、ドクツルタケ、カエンタケ、タマゴテングタケ、クサウラ ベニタケ、ツキヨタケ、ニガクリタケ、ベニテングタケ、コレラタケ(ドクアジロガサ) に加えて、トリカブトの根を調合しました。毒の成分が失われないように、特殊加工で 粉末にしました。 毒ではなくとも、吸い込んで速攻でダメージが出るように、ベリーズから直輸入した、 ハバネロの粉末も加えました。だから、この粉末を顔面にかけられると、涙と鼻水が、 しばらく止まらなくなるはずです。後から毒キノコの成分が、じわじわと効いてきます から。 たぶん、このエキスを飲む事は、ビルの十階から飛び降りて助かるかどうかと同じ 確率だと思いますよ」 夢野は、目を丸くして呟く。 「なんでそんなに・・・」 「キノコは、私の専門分野の一つです。表には出ないけど、日本で五本の指に入るくらい の知識はあると思いますよ。 前も言ったように、人の財産を横取りしようとする連中には、当然、手段を選ばずに 反撃に出ますから。 で、この毒キノコエキスで目玉になるのは、カエンタケの分量が多い事です。カエン タケは、別名『森の中のマスタードガス』と言われるくらいの猛毒ですからね。詳しい 説明は略しますが、化学兵器と同レベルの毒だとお考えください」 毒キノコに化学兵器レベルの力があるなど、夢野には初耳だった。 「そもそも、毒キノコには三秒ルールというものがあります。それは、口に入れて三秒 以内に吐き出せば、大体は大丈夫なんですけど、このカエンタケは、その三秒ルールも 適用出来ない猛毒があります。 この写真を見て頂ければお分かりのように、五センチくらいしかないですけど、真っ赤 な色だから、山の中を歩けばすぐにわかりますよ。 私の知り合いでも間違って食べた人がいますけど、四十度以上の熱が出て、髪の毛が 次々に抜け落ち、運動機能障害と言語機能の障害で、働けなくなりましたからね。エッ クス線の写真を見せてもらったら、小脳が委縮してしまったんですって。 こんなキノコが山に生えるのは、人間の怠慢です。ナラ枯れした山にたくさん生えて います」 カエンタケは、たんぱく質の合成など、体内の働きを阻害する毒素である、「トリコテ セン系マイコトキシン」を含有している。 このトリコテセンの化合物は、かつて、ベトナム戦争で、化学兵器として使われたもの である。すなわち、カエンタケが日本国内で多数見受けられるようになってきたのは、 山林を管理する所有者の、著しい怠慢としか言いようがないのだ。もしも、 「貴方の所有する山林に、ベトナム戦争で使われたのと同じ化学兵器の原料が、多数、 捨てられているぞ」 と脅しをかければ、どんな山林管理者も、慌てて処理を業者に依頼するであろう。 ところが、ベトナム戦争で使われるのと同じ化学兵器の元が、自分の山に増殖している など、思いもよらない所有者が増え続け、しかも、山林の手入れも怠っているため、 日本の今日の事態を招いているのである。 二〇一一年三月の東日本大震災では、原発が大いにクローズアップされ、原発を襲撃 すれば、どんな国でも危険だという事を、国際テロリスト達に教えてしまったような ものだが、それ以外でも、こんな恐ろしい化学兵器の元が存在する事をテロリスト達が 知ったら、大変な事になるだろう。 中東の過激派が、自らの体を使って自爆攻撃をする姿は、戦前の日本の神風特攻隊な どを見本にしていると言われているし、原発事故後には、国際テロ組織などが、 「日本からは、本当に色々な事を学べる。原発を襲えば良い事を、ハッキリ示してくれた」 と、幹部が公言しているくらいだからだ。 その上、さらに、ベトナム戦争で使われた化学兵器の元が、簡単に手に入る国という オチまでついては、日本国民にとっても、世界にとっても大変困る事なのだが、知能 指数の低い政治家が多く、その辺の対策は皆無である。 これだけでも、日本の政治がいかに当てにならないか、良くわかるのである。 夢野は、聞いた事のない言葉が出たので聞き返した。 「ナラ枯れってなんですか」 「ナラという木があるんです。カシノナガキクイムシという虫のターゲットは、他にも カシやシイもありますが、主にナラの木です。それらの虫の影響で、枯れた木として 放置されたままの状態だと、カエンタケの生育を助けてしまうんですよ。 まあ、森をきちんと管理しない人間への天罰でしょうか。触るだけでも、物凄いただれ となりますし、触った手で目でもこすれば失明間違いなし。 しかも、木と木の間の草をきちんと刈り取る、『間引き』とかの管理が行き届いて いない山が多いから、最近は観光地の山道で見かける事もありますよ。 もっとも、私はそのおかげで、私の財産を不当に奪おうとする輩を撃退する猛毒の一つ を、簡単に手に入れられるわけですがね。 山をきちんと管理しないバカが多いおかげで、森の中のマスタードガスのカエンタケ を、取り放題です。 私が時期になると関西地域に良く行くのは、このカエンタケを取りに行くためです。 エキスを特殊加工で粉末状にすれば、生物兵器そのものです。実際に、このキノコと同じ ような成分が、兵器として戦争で使われたりもしていますしね」 「そしたら、前に日光の杉並木の下に、金庫を隠していましたよね。そのカエンタケと いう毒キノコの生えている場所に、金庫を埋めれば良いんじゃないですか?」 「それは良いアイデアですね。さすがは夢野さん。今度、そうしますよ。西日本の山 も、昔と比べて管理が行き届いていないから、カエンタケがどんどん生えてきています。 金を隠す場所には最適ですね」 化学兵器と同レベルの危険な猛毒の下に、お金が眠っている事を予想する人間は、 そう多くはないであろう。大島は、夢野の提案を後から実行する決意をしたのである。 複数の毒キノコの写真を見て、夢野は思い出すように呟いた。 「そう言えば、ベニテングタケって、昔見た百科事典で、毒キノコって出ていたな」 大島は、 「ベニテングタケですけど、食おうと思えば食えますよ」 と言った。夢野もこれには驚く。 「え。猛毒じゃないですか?」 「確かに毒ですが、長野県では、塩抜きしてしばらくしたら、食べていますよ。中々の 美味です。 私の記憶では確か、上田市とか真田市近辺では、塩抜きしたベニテングタケを、良く 食べています。 極端な事を言えば、ベニテングタケの毒性は、たいした事がないです。 ベニテングタケの毒成分であるイボテン酸は、毒であると同時に、食用キノコにも微量 に含まれるキノコ全般の旨み成分でもあるという、この矛盾。どう思いますか? そのため、かなり昔になりますけど、ベニテングタケの生食大会まであったという 話です。 人間は、胃袋を満たしたいという思いがあって、毒と知りながら手を出したくなる ものなんです。要するにフグと同じで、毒があると知りながら、食べたくなるわけで す。私の考えでは、フグと同じように国家資格を作って、ベニテングタケを食べさせれ ば良いと思うんですけどね」 と答えた。 「それは知らなかったです」 「食えるだけ、まだ良い方でしょうかね。しかも、ベニテングタケは鮮やかな色をして いるので見分けがつきやすく、有名なだけまだマシです。カエンタケも、真っ赤な色を していますから、かなり見分けがつきやすいです。 でも、例えば、これがドクツルタケとなると、食用のキノコと間違えて取る人もいて、 毎年のように、新聞に死亡事故が出ています。このキノコは、食べたら毒を中和する 解毒剤もないです。 ドクツルタケは、天ぷらにしてしまう家族連れが多くて、一家全滅の皆殺しになる 事が良くありますね。ドクツルタケ一本で、成人の致死量に達するみたいです。 まあ、素人は、白いキノコには手を出すなと覚えておけば良いでしょう。そうすれ ば、毒キノコの餌食になる確率は、少なくなりますから」 「素人は、野生のキノコには、手が出せないですね」 「プロでもそうです。うかつに手を出すと、とんだ事になりますよ。 クサウラベニタケは、食用のウラベニホテイシメジと同じような環境に生えていたり します。私も危うく間違うところでしたから。下痢や腹痛が酷いですし。 あと、素人が良く間違うのは、ブナの幹に生えてくるツキヨタケです。シイタケや ヒラタケと間違って収穫して食べてしまうと、手の先がしびれて、数日間、狂ったよう に暴れるほど苦しみます」 さらに、 「私の知り合いで、ニガクリタケを食べて病院に運ばれた人もいます。下痢、嘔吐、 痙攣が出て、もう少しで死ぬところだったそうです」 と付け加えてきた。 「毒キノコって恐ろしいですね」 「恐ろしいです。ヒトヨタケなんか、人間を選んで中毒症状を起こしますから。シラフ だと、大体は大丈夫なんですが、酒と一緒に飲み食いすると、物凄い中毒症状を起こ します。 あとは、食べると物凄い激痛を引き起こして、医療用のモルヒネも効かないほどの 激痛を与えるのが、ドクササコです。 でもまあ、強力なのは、やはり、触るだけでも死ぬ可能性のあるカエンタケですね。 京都、大阪、滋賀、福井で発見されたのと、東日本では、群馬、新潟、山形などで 発見されたと、確かニュースでもやっていたはずです。 こんなにカエンタケがたくさん出てくるなんて、山の所有者が大馬鹿だという、何 よりの証拠なんですよ。キチガイに刃物という言葉がありますけど、馬鹿な山林 所有者にカエンタケと言った方が良いんじゃないですか」 |